前置き:27年の競技生活で腰痛がなかった理由
実技の前の対談部分です。村上先生は競技生活27年で腰痛の経験が一度もないと話し、その理由を「腰痛が治らない選手を観察して見えたこと」から説明しています。
- 外側だけ固めている:腰痛が改善しない選手はウェイトトレーニング中心で、外側の筋肉ばかり固く、内側がスカスカ。先生は「外観は立派なのに中に入ると頼りない家」にたとえています。
- 足裏を全部使えていない:つま先だけで着いて歩く癖のある選手は腰痛に苦しんでいる。つま先は本来、作った力を次へ送り出す場所で、そこで着地するとブレーキをかけながら進むことになり、背中が反ってくる。
- 姿勢がよい人は腰痛がない:反った背中は、体幹の筋肉がチームとして働いていない証拠だという見方です。
手のひら合わせ押し(体幹の「組織化」を体験する)
やり方
- 2人で向かい合い、片手の手のひらを合わせる。足と膝は正面に向けたまま動かさない。
- 悪い例を先に試す:体ごと(おへそごと)押す方向へ回して押してみる。腕は前に出ていかず、相手を押せない。
- 正しい例:おへそは正面に残したまま、むしろお腹は反対向きに引くつもりで、腕だけを押し出す。腕がすっと前へ出て、相手を押せる。
「体幹強化というのは腹筋強化ではないんです」— 村上先生(動画内)
左右の腹斜筋のように、同じ名前の筋肉でも、ひねる場面では左右で仕事が違います。全部を同じ向きに動かすのではなく、それぞれに役割を持たせて一つのチームにすることを、先生は体幹の「組織化」と呼んでいます。
一歩踏み出したところを指で押してもらう
やり方
- 片足を一歩、前にドンと踏み出して止まる。
- 相手に人差し指で軽く押してもらう。反対の足でも行う。
トレーニング前は、ほとんどの人が指一本で簡単に崩れます。先生は「支点どうしの連動がつながっていない状態」と説明し、年齢は関係なく、30分ほどの運動で変えられると話しています。
足を大きく開き、両手を着いて腰で円を描く
やり方
- 足を前後に大きく開く。
- 両方の手のひらを、前足の真横の床に置き、床を押す。
- 両手・両足の4点が床に着いた状態を保ったまま、腰で円を描くように回す。上から見て、腰がぐるっと回っていくイメージ。
- 左右それぞれ10回ずつ。
この場面で語られていること
- 中から温める:よい動作は体の芯から温まる。表面だけ温めても意味がなく、新聞紙のようにすぐ燃えてすぐ消えるのではなく、炭のように一度ついたら長く保つ状態をつくる準備運動だ、という説明。
- 地面のつかみ方:猫の肉球を押すと広がって爪が出るのと同じで、体重をかけて踏み込むと足裏や手のひらは広がる。先に指を握り込んだ状態で着いても使えない。まず広げて接地面を大きくすることを、先生は「地面との接触の密度を高める」と表現しています。
手で歩いて前へ出て、戻る
やり方
- 両手を床に着き、お腹に力を入れて背中が丸い山(アーチ)になった構えをつくる。
- お腹の力を保ったまま、手で歩いて前へ進む。進むほど背中の山はなだらかになり、床と平行くらいまで伸びる。
- 手で歩いて戻る。足に近づくほど、背中はひとりでにまた丸い山になる。行けるところまで近づく(先生いわく、アスリートなら肘と膝がつく)。
四つ這いで、お腹から背中を持ち上げる(腕を動かさない版)
やり方
- 四つ這いになる。肩の真下に手、お尻の横(大転子)の真下に膝がくるようにし、腕と太ももを床に対して垂直にそろえる。
- 手と足で床を押し、その力をお腹に伝えて、お腹から背中を丸く持ち上げる。頭は自然にもぐり、おへそを見る向きになる。
- ゆっくり下ろす。ただし、だらんと下まで落とさず、緊張を残した位置で止める。体は前後に動かさない。
・頭を動かさずに行う(ぎこちない動きになる)。お腹を縮めれば頭がもぐるのが自然な動きです。
・構えの時点で腕や太ももが斜めになっている。
途中で入る「構え」の補足(2:31:10ごろ)
参加者の動きを見た先生が、いったん止めて構えを直しています。自分の体を家にたとえると、支える柱が斜めでは押されたら簡単に倒れる。肩から手、大転子から膝がそれぞれ床と垂直になって、はじめて「始めてよい構え」になる、という内容です。構えができていないと種目の効果が薄れる、とも話しています。
腕立ての姿勢から、お腹を縮めて足を引き込む
やり方
- 両足をまっすぐ伸ばした腕立ての姿勢をとる。お腹に緊張を入れ、腰を落とさない。
- お腹をぎゅっと縮め、背中側を少し上へ持ち上げる。お腹の下にできた空間へ、片足が胸元に引き込まれてくる。
- お腹(胴体)を下ろすことで、足が元の位置へ戻る。
・戻すときに足が先に下りる。
・構えで腰が落ちている。この状態では横から押されても戻ってこられません。
補助つきで、お腹を真上に引き上げる
やり方
- 構えをとり、補助の人が足裏と膝を押さえて、膝の位置が動かないように固定する。
- 息を吐きながら、お腹を真上へ持ち上げる。お腹の力で、背中側にあるものを引き上げるつもりで行う。
- 下ろして、繰り返す。難しい人は、手のひらを床にしっかり押しつけて行う。
この種目は構えの説明が映像頼みで、音声では姿勢の細部が語られていません。上の手順は音声の内容からまとめたものなので、開始姿勢は必ず動画で確認してください。
もう一度、一歩踏み出して押してもらう
最初と同じチェックをもう一度行います。会場では、押されても耐えられるようになった様子が映っています。先生は、体が熱く感じるのは大事な反応で、いまは「整った状態」だと説明し、帰り道の歩き方がどう変わったかを感じてみるよう勧めています。
超音波エコーで見る体幹の筋肉(実施前)
トレーニングの前に、モデルの方の体幹をエコーで観察している場面です。見ているのは次の3か所です。
- 腹横筋:おへその外側あたりで、外腹斜筋・内腹斜筋・腹横筋の3層を映し、お腹をへこませる動き(ドローイン)で一番下の層が縮むかを見る。
- 胸腰筋膜:腹横筋がしっかり縮むと、後ろ側の筋膜が前へ引っ張られて滑る。この滑りが腹圧の高まりにつながる。
- 多裂筋:うつ伏せで足を上げ、腰の深い筋肉が縮むかを見る。
実施前のモデルの方は、腹横筋はよく縮むものの、胸腰筋膜の前への滑りと多裂筋の縮みが弱い、という評価でした。
超音波エコーで見る体幹の筋肉(実施後)
同じモデルの方を、5種目のあとにもう一度観察しています。
- 腹横筋:もともと強く縮む方だったため、前後で大きな違いは見られなかった。
- 胸腰筋膜:実施前はほとんど動かなかったところが、前方へ2〜3cmほど滑るのが確認できた。お腹のまわり全体で腹圧をかけられる状態になった、という説明。
- 多裂筋:変化が出にくい場所で、今回ははっきりした違いは示されていない。
5種目の早見表
| 種目 | 回数 | いちばん大事な意識 |
|---|---|---|
| 1 足を開いて腰で円を描く | 左右各10回 | 手足4点を広く着ける。負荷は丹田と股関節に |
| 2 手で歩いて前へ出て戻る | 6回 | お腹の力を一切抜かない。腕はお腹で動かす |
| 3 四つ這いで背中を持ち上げる | 10回 | 床を押した力をお腹へ。だらんと下ろさない |
| 4 腕立て姿勢で足を引き込む | (動画内で回数の指定なし) | お腹が縮むから足が来る。足に意思はない |
| 5 補助つきでお腹を引き上げる | 10回 | 膝を固定し、体幹で手足を動かす |
全種目に共通する3つの軸
- 地面を押す:床に着いている部分は広く着け、すべて床を押す。
- お腹(腹圧)を抜かない:動きの出どころは常にお腹。手足はそれについてくる。
- 感じながら行う:回数をこなすのではなく、「こういう感じか」をつかむところまでが1セット。